ぞうさんニュース

◆社会認知ってなんだろう?

発達に関する説明に、長らく「社会性の発達」「対人反応」ということばをよく使ってきました。最近それに代わり「社会認知」ということばをよく目にします。
一言でいうと「他者を知り、自己を知る認知機能」です。「他者を知る」とは、他者の意図や性質を理解することであり、その過程で「自己を知る」ことも同時に必要になります。 生直後からの泣きは、空腹か?眠気か?痛みか?によるものが殆どです。その問題が解決すると穏やかになります。生後6週を越えると喜怒哀楽の感情が分化し始め、泣きの種類も増えてきます。ただ赤ちゃん自身が自分の感情に気付いているわけではありません。養育者に気付いてもらおうという役目を持っています。養育者が赤ちゃんの訴えに気付くセンサーを磨く、応じてあげるテクニックを身に付けることで、やり取りができるようになります。この中で赤ちゃんも言葉なきコミュニケーションを覚えていきます。見る・聞く力のほかに、真似をする力(ミラー細胞・2011.4月号に掲載)の育ちも必要になります。このやりとりでボウルビーのいう基本的信頼関係を築き上げます。この他者を知ることが社会認知の始まりです。
では「社会ってなに?」
無人島のようなところで一人で暮らしていれば社会は存在しません。そこでは自分の好きなように起きて寝て、食べて、行動していれば良いのです。夫婦・親子・兄弟他、2人以上の人が一緒に暮らすと、そこに社会が生まれます。家族社会、学校社会、地域社会等がそうですね。たった2人でも共同生活がうまくいくためには、対話して、一定のルールのもと、お互いの気持ちへの共感や譲り合いが必要になります。 「他者を知る」発達はすでに乳児期早期から始まっているという実証実験がなされています。赤ちゃんに2者の争い(形で)を見せ、片方がいじめられる展開にしたうえで第3者が正義の味方の行動をする場面に、赤ちゃんが正義の味方にとても関心を示す反応を観察しています。このことから鹿子木(かなこぎ)康弘先生は赤ちゃんの性善説的共感性を示しています。ただ基本的信頼関係を築く環境にない場合はどうなるのか?今後の観察結果が待たれます。
社会認知を育てることは、子育てのたいせつな役割のひとつですね。

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